LGBT法連合会

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【声明】一橋大学アウティング事件の東京地裁判決についての声明

2019.02.28

お知らせリリース

2019年2月28日

一橋大学アウティング事件の東京地裁判決についての声明

性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する
法整備のための全国連連合会
(略称:LGBT法連合会)
共同代表一同
(団体URL:https://lgbtetc.jp/)

2019年2月27日、東京地方裁判所は一橋大学アウティング事件について、転落死した大学院生の遺族側の訴えを棄却し、大学側に安全配慮義務等の瑕疵がないものとした。なお、判決文において、アウティング自体に対する直接的な判断は避けているが、本件事案を個人間のトラブルに矮小化するものではなく、重大性があることを伺わせる記述も見られる。
LGBT法連合会としては、判決が極めて遺憾なものであると言わざるを得ない。被告である大学側が「性的指向」を「好み」と主張していることなどから、性的指向に関する十分な認識と、性的指向に関する差別から生じる「アウティング」に対して十分な対応がなされていたかは、大いに疑問があるところである。また、アウティングという命を脅かす危険に対して、大学の安全配慮義務が及ばないとすれば、学内における当事者の安全は脅かされ、常に緊張を強いられる環境下に当事者が置かれる状況を容認するということであり、受け入れることはできない。

判決では、被告が安全配慮義務を怠ったとは言えないと述べられており、ハラスメントに対応する落ち度がなかった点等が強調されているように見受けられる。しかし、アウティングがハラスメントの一類型であることは当然としても、性的指向に関してスティグマが付与されている社会状況や、教育現場でこの課題が扱われていると言い難い点、更には性的指向というプライバシーの漏洩自体が人権侵害であるとともに、一度流出した情報が広まり、当事者の日常生活における様々な状況を悪化させるものであるなどの、性的指向に関する困難の実態に対する認識が不足したものであると言わざるを得ない。

性的指向に関する情報保護の観点については、自治体がアウティングを禁止する条例を制定したり、2018年9月に国の個人情報保護委員会が、EU域内から認定を受けた個人データを受領する事業者について、「性的指向」を個人情報保護法の要配慮個人情報(本人に対する不当な差別、 偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの)と同様に取り扱うことを定めるなど、「性的指向」に関する情報の取り扱いについて、細心の注意が求める基準が設けられてきている。今回の判決は、このような観点に立った判決となっておらず、認識が不十分であると指摘する。また、大学をはじめとする教育現場において、予防、相談対応をはじめとする各段階で、性的指向や性自認に関する個人情報の取り扱いについて、見直しが求められることを指摘する。

今回の判決を受けて、大学をはじめ広く社会において性的指向に関する困難の認識を深めるためには、改めてアウティングをはじめとする差別をなくすための法制度が必要なことを痛感するものである。法によって性的指向・性自認に関するハラスメント対策の必要性や重要性が規定されず、アウティングなど性的指向や性自認に特徴的な情報の取り扱いに関わる困難を防止・対応する基準が広く設定なされていないが故に、一般的なハラスメント対策に終始する議論となっている点などから、このことは明らかである。われわれは本判決を胸に、全力をもって法整備に取り組み、二度とこのような痛ましい事象が起きぬよう、関係各所に求めていくものである。

以上

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