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【声明】性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の3条1項4号規定を憲法違反と判断する最高裁判所の決定について

2023.10.26

リリース

2023年 10月 26日

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の
3条1項4号規定を憲法違反と判断する最高裁判所の決定について

 

一般社団法人 性的指向および性自認等により
困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会(略称:LGBT法連合会)
理事一同
(団体 URL:https://lgbtetc.jp/)

2023年10月25日、最高裁判所は、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下、特例法)の3条1項4号規定(いわゆる「生殖不能要件」)を憲法13条違反と判断した。これにより、国会は同号についての法改正を迫られることとなる。一方で、高等裁判所に決定を差し戻し、3条1項5号規定(いわゆる「外観要件」)について再度審理させることとした。なお、3名の裁判官が個別意見を出しており、5号規定についても違憲であるとし、最高裁判所の判断として法律上の性別の変更の申し立てを認めるべきであるとした。当会は、生殖不能要件を違憲とする今回の決定によって、新たに特例法の要件を満たす当事者の人生を大きく改善するものとして、一定程度評価する。また、この決定に関わった関係者に敬意を表するものである。一方、差し戻される5号規定はじめ、4号規程と関連の深い3号規程(いわゆる「未成年の子なし要件」)など、課題はまだ残されていることについても指摘する。

最高裁判所は、生殖不能要件は、直接的に生殖腺除去手術を強制するものでないとする一方で、生殖腺除去手術を必要としない当事者に対し、身体への侵襲を受けない自由を放棄して強度な身体的侵襲を甘受するか、性自認に従った法律上の性別の取り扱いを受けるという重要な法的利益を放棄するかの二者択一を迫るものであり、この間の社会的変化、医学的知見の変化も踏まえると、身体への侵襲を受けない自由への制約は過剰であるとした。

今回、個別意見において、公衆浴場やトイレの利用について検討され、公衆浴場やトイレが5号規定により制約する合理的な理由や関連性がないとされたことを当会は強調する。かねてより当会などから指摘されてきたことであるが、特例法の要件の問題と男女別施設の課題が安易に接合され、実態を踏まえれば施設利用における課題解決とは無縁となる言説が繰り返されることに、改めて警鐘を鳴らすものである。一方で、当会が確認した範囲においては、生殖不能要件を排した国において、手術を要する外観要件のみを温存している国は見られず、立法府は個別意見も十分に踏まえた対応が求められるものである。この時、新たな規定を検討するにあたっては憲法に反する、制限的な規定は許されないものであることは、留意されるべきである。

当会は、今後の法改正に向けた議論において、今回の決定や科学的、医学的知見を踏まえない、これらに真っ向から反するような差別を助長する言説が無いよう強く求めるものである。人権救済の議論によって、人権を侵害するような言説が助長されるとなれば、それは、本末転倒という他ない。当会は、今回の決定に基づく法改正が、着実かつ迅速に行われることに向け、取り組みを進めていく。

以上

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