2022月9月9日
内閣府の「ジェンダー統計の観点からの性別欄の基本的な考え方について」に対する声明
一般社団法人 性的指向および性自認等により
困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会(略称:LGBT法連合会)
代表理事・理事一同
(団体 URL:https://lgbtetc.jp/)
2022年9月、内閣府に設置された、ジェンダー統計の観点からの性別欄検討ワーキング・グループ(座長・白波瀬佐和子東京大学大学院人文社会系研究科教授)は、「ジェンダー統計の観点からの性別欄の基本的な考え方について」を発表した。性別欄のあり方についての議論が一定整理され、トランスジェンダーなどがハラスメントや差別に遭う可能性について認識されたこと、参考となるフローチャートにおいて性別情報を表示することが基本的に不要ではないかという意見が掲載されたことは一定評価できるが、適切な質問項目や選択肢が示されなかったのは残念である。
報告書では、男女別データの取得が必要であることが合意された一方で、「性別欄が存在することでハラスメントや差別に通じる困難に直面する人たち」についても言及された。加えて、性別欄を設ける際に、「どの時点の何の性別」(出生時の性別、社会生活上の性別など)について聞いているのか明確にする意義や、性別欄を不要とする判断もあり得るケースについても記載されたところである。また、統計調査等において、多様な性への配慮に留まらず、性的マイノリティの実態や課題の把握をすべきだとの意見や、性別情報の表示がアウティングやハラスメント、差別に通じる可能性を避けられないとの意見、各種証明書等での表示は基本的に不要ではないかとの意見も記載された。
当会はワーキング・グループの構成員として参画し、性別欄がトランスジェンダー等にもたらす困難や、性的指向・性自認も含めた包摂的なジェンダー統計のあり方を模索する必要性、どのような性別情報を取得するのかを理由とともに明記し、どの時点のどの性別情報を取得するのか十分に検討し、明確にすべきであると発言してきた。一部内容は報告書に掲載、あるいは意見として記載されたものの、全体として適切な質問項目や選択肢を示すに至らなかったことは残念である。
今後も、性的指向や性自認に関する実態把握を促進するとともに、トランスジェンダー等の困難を十分に踏まえ、漫然と従来通りに男女別データ取得のための性別欄を置くのではなく、より包摂的なジェンダー統計の整備に向け、質問項目や選択肢の検討や改善を進めるべきである。そのために、今回のワーキング・グループの検討を踏まえ、各政府機関がそれぞれの分野におけるジェンダー統計のあり方を更に検討し改善を目指すことが重要である。民間企業や地方自治体も含め、差別をなくすために必要な統計調査によって、当事者が追い詰められることは本末転倒であり、今回の報告書に掲載された国内外の先進的な事例を参考とし、適切な調査が各分野で行われるよう当会も引き続き働きかけを行なっていく。
以上