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【声明】第204回 通常国会閉会により「LGBT新法」が成立しなかったことを受けて

2021.06.18

お知らせリリース

2021年6月18日

第204回 通常国会閉会により「LGBT新法」が成立しなかったことを受けて

 

一般社団法人 性的指向および性自認等により困難を抱えている
当事者等に対する法整備のための全国連連合会
(略称:LGBT法連合会)
代表理事・理事 一同
(団体URL:https://lgbtetc.jp/)

国会は、6月16日に会期を終え、閉会した。この国会会期中に、超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」において、初めて法案に関する与野党の合意がなされるなど、大きな前進があったものの、法案の成立に至らなかったことはただただ遺憾である。当会が主催団体として展開したキャンペーン「Equality Act Japan−日本にもLGBT平等法を」が実施した署名には、国内外から106,250筆が寄せられ法制定に向けて国内外から大きなムーブメントが巻き起こったことは感謝に堪えない。一連のムーブメントに関わった全ての当事者等と大いに讃えあいたい。一方で、法案審査に係る一連の議論の中において、重大な差別発言や、バッシング、当事者の存在否定ととれる議論がなされていたと報じられたことには大きな怒りを持って、極めて厳しく受け止めている。

今国会では、かねてから野党が提出していた、いわゆる「差別解消法」に対し、自由民主党が4月にいわゆる「理解増進法」を取りまとめ、4月半ばから5月中旬にかけて、超党派の議員連盟において、与野党の法案の一本化に向けた論点整理と協議が行われていた。これにより、自民党案の「性同一性」を、既に多くの条例や国の指針、あるいは各分野の事典や教科書、国家試験において採用されている「性自認」に変更するとともに、「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるという認識の下」という文言を法の目的、基本理念に加えるという修正で折り合った。

修正した法案は、不十分な点も多々見受けられるものの、当会としては辛うじて評価できる内容であった。基本理念に基づいた施策の実施を、国、地方公共団体、事業主、学校に努力義務として課し、国が基本計画を策定するなどの義務を負うことは、差別を助長する施策の実施を阻み、極めて小さくとも歴史を前進させるものと解釈できたためである。

他方で、この間の議論において、ジェンダーアイデンティという概念の訳語として法文に「性自認」の語を採用することで、自らの気まぐれでジェンダーアイデンティティを変更可能と定義されることになるという虚偽の言説が流布され、それに基づく議論に拍車がかかったことは、看過し難かった。そのような認識で「性自認」を位置付けること自体、既にある「性自認」に基づく制度を歪め、社会に大きな混乱や悪影響をもたらす。その他、法的効果の拡大解釈、誤謬が後を絶たず、「SOGI」で規定された条文を「LGBT」に取り違えた議論や法文の規定以上の効果に関するあり得ない仮定の議論がなされた。関係者には今一度、虚心坦懐に実際の法文やその効果、差別の実態に目を向け、誠実に議論をするよう強く要望する。

また、議論の中で噴出した差別発言も、これまで繰り返され、社会的に問題があると指摘され続けてきた内容と同趣のものが多く、極めて遺憾である。猛省を促すとともに、関係者による再発防止の徹底がなされるよう、注視していかなければならない。この課題は人権の問題である。昨今の無作為抽出の意識調査において、人々の当事者に対する嫌悪感が著しく下がり、性的マイノリティに対する差別やいじめを禁止する法律に約9割が賛成しているという結果がある。政治家がこうした社会の変化を正面から受け止めるべきである。そして、誤った主張が未だになされている現状と、そうした主張が今後、日本社会や国際社会にどのように認識されるものか、今一度省みるべきである。これらの認識については、来る国政選挙の際に、かねてから当会が取り組んできた政党・候補者アンケートにより、浮き彫りにしていきたい。

現在も、「Equality Act Japan−日本にもLGBT平等法を」には大きな賛同が寄せられ、当初の当事者団体、国際人権団体、国際的なアスリートの団体に加え、企業の賛同も広まりつつある。また、一連の運動には、司法関係者や各種団体からも支援が表明されている。IOCや在日外交官関係からも、プライド月間に併せ、性的指向や性自認による差別の禁止や平等の重要性について声が寄せられた。さらには、先般のG7においても、当事者への差別の対処が共同声明に明記され、日本においても国際公約となっている。このような運動の歴史的興隆は現時点での達成と捉えられる。全ての日本の当事者とその関係者全員にとっての到達点であり、かつ、さらなる困難解消に向けた通過点であることを、今一度、多くの当事者と実感し、噛み締めたい。その上で、当会は、性的指向・性自認による差別をなくすための運動を今後も進めていくことを改めて表明するとともに、法律の制定に向けて、今回の結果を総括し、そこから得られた洞察と経験をもとに、今後も着実に歩みを進めていく。

以上

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