2018年6月8日
「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための 条例(仮称)条例案概要」に対するLGBT法連合会の考え
性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する
法整備のための全国連連合会 (略称:LGBT法連合会) 共同代表一同
(団体URL:https://lgbtetc.jp/)
2018年6月4日、東京都は「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例(仮称)条例案概要」を公開し、意見募集を開始した。概要は、先日公開された「条例のポイント」と比較し、差別の解消に臨む姿勢が一定程度明確になっており、前向きに評価したい。一方、具体的な施策が不明瞭なままであるため、現状の性的指向や性自認に関する差別や偏見をどのように改善できるのか、当事者の生活がどのように変わるのかが、依然として見えづらい。
今回公開された内容は、先日公開された条例のポイントをほぼ踏襲するものであるが、新たに明らかになった内容として、「(3)都民や事業主の責務 都民、事業主がそれぞれの立場で性自認や性的指向などを理由とする差別解消の取り組みを推進」があげられる。責務が規定されること自体は評価できるが、「それぞれの立場」で具体的にどのような取り組みを推進するのかの明示が必要と考える。
前回の条例のポイントに引き続き、「差別禁止」規定をはじめとする、差別やハラスメントに対する実効的な規定は見られず、この点は極めて残念である。 東京都とともに「東京オリンピック・パラリンピック競技大会」の運営を担う「東京オリンピック・パラリンピック組織委員会」(以下「組織委員会」という)の「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会持続可能性に配慮した調達コード」(以下「調達コード」という)には、性的指向・性自認による差別やハラスメントの排除が明記されており、新たに出された「解説」には、アウティング防止などを念頭に置いたと思われる「プライバシー保護、情報管理に関する規定やマニュアルの整備」など、具体的かつ詳細な施策が打ち出されている。今後、東京都がこのような組織委員会の取り組みとどのように整合性を取っていくのかが問われる。
今回、意見募集が行われることとなったが、条例案概要の策定という基本的な考え方の取りまとめに至るプロセスにおいて、さまざまな当事者が広く議論に参画していると言い難い点は残念である。今後の条例の制定、運用のプロセスにおいて、さまざまな性的指向・性自認の当事者の参画が強く望まれる。
国連12機関が各国に向けた共同声明「Ending violence and discrimination against Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender and Intersex people」では、差別禁止施策の制定や運用への当事者の参画が求められており、LGBT法連合会の考えとも合致する。私たちは国際基準を満たす条例の制定を東京都に期待し、当事者の意見反映を要望していく。同時に、東京都や組織委員会とともにオリンピック運営を中心的に担う、国の法整備が急がれる点を改めて強調したい。
以上