2019年12月13日
経済産業省における性自認に基づくトイレ利用に関する
東京地裁判決についての声明
性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する
法整備のための全国連連合会
(略称:LGBT法連合会)
共同代表一同
(団体URL:https://lgbtetc.jp/)
2019年12月12日、東京地方裁判所(以下、東京地裁)は、経済産業省(以下、経産省)の職員が性自認に基づいた女性トイレの利用を制限されたことについて訴えていた裁判で、東京地裁は性自認に基づいたトイレの利用を制限した経産省の措置は違法だとして、これを取り消し、経産省に約130万円の賠償を命じた。本判決は多くの部分が画期的な判決だと評価することができる。
東京地裁は、原告に職場の女性トイレを自由に使用させることとの要求を認めなかった点について、トイレの利用の制限は、真に自認する性別に即した社会生活を送るという重要な法的利益を制約するものとし、違法であると判じた。加えて、「なかなか手術を受けないんだったら,もう男に戻ってはどうか」との発言についても、性自認を正面から否定するものとして、職務上、尽くすべき注意義務を怠ったとして違法の評価を免れない、とした。
経産省が、トイレの利用制限等の理由を、女性職員との間で生ずるおそれのあるトラブルを避けるためと主張したのに対し、東京地裁が、安易な先入観にとらわれず、施設の実態上の構造などに着目し、被告の主張するトラブルが生ずる可能性は抽象的なものにとどまると示した点を、当会は特に評価する。また、多目的トイレの利用の推奨に問題を含むことを指摘している点も評価できる。一方、トイレの利用にあたってカミングアウトを求めたことを違法とした点も、カミングアウトを権利であると位置付ける昨今の自治体条例につながる注目すべき点である。また、事実上、性別適合手術をトイレ使用の条件としたことについて、意思に反した身体への侵襲を受けない自由を制約すると判じた点は、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」という)の改正に向けて、重要な判示であると受け止める。
今回の判決は、性自認に関する差別や偏見を受ける多くの当事者を勇気づけるものであり、判示された内容は、社会全体で受け止めるべきものである。トイレ以外の男女別取り扱いも併せ、社会全体で見直しや改善に向けた取り組みが必要である。また当会は、今回の人権侵害の懸念が極めて強い特例法の手術要件につながる判示を重く受け止め、立法府に対応を求めていきたい。
以上