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【声明】パワーハラスメント指針における適切なSOGIハラ対策の法制化を求める声明

2019.11.28

お知らせリリース

2019年11月28日

パワーハラスメント指針における適切なSOGIハラ対策の法制化を求める声明

性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する
法整備のための全国連合会(略称:LGBT法連合会)
共同代表一同
(団体URL:https://lgbtetc.jp/)

2019年11月21日、政府は「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)」(以下「指針案」という)の意見募集、いわゆる「パブリックコメント」を開始した。指針案は、厚生労働省労働政策審議会雇用環境・均等分科会における審議を経た内容である。指針案は、性的指向・性自認に関するハラスメント(以下「SOGIハラ」という)や、性的指向・性自認の望まぬ暴露である「アウティング」をパワーハラスメント対策の対象に位置付けるとともに、性的指向・性自認を機微な個人情報やプライバシーと位置付けている。性的指向・性自認に関する国の取り組みとして、初めて法を背景とした取り組みの義務付けを求める内容であり、一定評価できるものである。ただ、SOGIハラについては、パワーハラスメントとなり得る例示を一つ示すに留まるとともに、パワーハラスメントとなり得る範囲が狭いとの懸念が残る部分もあり、遺憾な点も指摘せざるを得ない。

指針案は、パワーハラスメントに該当すると考えられる例を、6類型に分けて示しており、「精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)」に「人格を否定するような発言を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む」と示した。加えて、「個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)」に「労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること」を示した。このアウティングに関する例示については、「機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要である」と示すとともに、「相談者・行為者等のプライバシー」には、性的指向・性自認」等が含まれると明記、必要な措置を義務付けている。

指針案はSOGIハラを例示に留め、私たちの求めたパワーハラスメントの内容にSOGIハラやアウティングを位置付け、明示することは行わなかった。また、国会で答弁のあった「仕事からの排除」や、当事者が特に職場で苦しむ、アウティング以外の「個の侵害」(交際相手について執拗に問う、ライフスタイルやそれに伴うキャリア展望を執拗に問う等)などの例示も見送った。加えて、指針案例示の「相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動〜」のうち、私たちが求めた「相手の」の削除はこれを退けた。これにより、特定の相手に対する言動ではないもののうち、関係者がいると知らずに行われたSOGIハラは、パワーハラスメントに該当しない解釈となり得る。職場で差別や偏見を受ける懸念から、カミングアウトできない当事者が極めて多い状況下において、不十分な内容であると言わざるを得ない。改めて指針案から「相手の」を削除するよう強く求めたい。その他、パワーハラスメント対策の措置義務や、就活生、フリーランス、インターンシップへのハラスメントやカスタマーハラスメントに、SOGIハラ対策やアウティング対策が含まれる旨がわかりづらい記載である点など、今後の運用に対する懸念も指摘したい。

LGBT法連合会は、今回の指針案を実効的なものとするため、賛同団体をはじめとして、広くパブリックコメントの提出を呼びかける。多くの当事者や関係者に意見の提出を促すことを通じ、指針案をより良いものに改善し、当事者やその家族や友人などの関係者一人一人の日常に着実に届く施策となることをめざして、全力で取り組みを進めていく。

以上

(外部リンク)「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)」

※パブリックコメント提出先
(外部リンク)事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)に係る御意見募集について

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