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【声明】厚生労働省が2017年8月31日に発出した「被保険者証の氏名表記について」に関する通知について

2017.09.13

お知らせ

以下声明文を発表いたしましたのでお知らせいたします。


2017年9月12日

厚生労働省が2017年8月31日に発出した「被保険者証の氏名表記について」に関する通知について

性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する
法整備のための全国連連合会(略称:LGBT法連合会) 共同代表一同
(団体URL:https://lgbtetc.jp/)

28.3.17保険証 厚生労働省は、2017年8月31日に、性同一性障害を有する方の健康保険証の氏名について、日常で使う「通称名」の記載を認めることを都道府県や公的医療保険の運営者に通知した。当連合会は、従前から要望してきた内容の一部となる厚生労働省の通知の発出に対して、一歩前進であると受け止めるととともに、未だ課題が多く残ることを指摘する。

厚生労働省は、都道府県や公的医療保険の運営者に対し、性同一性障害を有する被保険者又はその被扶養者から、被保険者証において通称名の記載を希望する旨の申し出があり、保険者がやむを得ないと判断した場合には、被保険者証における氏名の表記方法を工夫しても差し支えないと通知し、通称名の記載を認めた。

ただし、裏面を含む被保険者証全体として戸籍上の氏名を確認できるようにするとともに、保険者において性同一性障害を有するか否かを判断するために、医師の診断書等の性同一性障害を有することを確認できる書類及びその通称名が社会生活上日常的に用いられていることが確認できる添付書類を提出する必要がある、とのことである。これは、被保険者証の性別欄の記載を工夫し、表面でなく裏面に記載してもよいとした2012年9月21日の通知に類似した扱いである。

従前より、医療保険のうち国民健康保険においては、厚生労働省が事務連絡を発出し、保険者の判断で保険証に通称名を記載することを認めていた。本通知によって、被用者保険(協会けんぽ・健保組合)及び後期高齢者医療保険制度においても対応を統一化し、健康保険証への通称名の記載が保険者の判断に委ねられることが明示された。

今回の対応は一歩前進ではあるが、一方で、通称名記載はあくまで保険者の対応に委ねられるため、すべての人が通称名を記載できるようになるとは限らない点が課題として指摘できる。さらに、通称名記載には、医師の診断書等「性同一性障害を有することが確認できる書類」が求められるため、施策の対象は限定的である。この点で上記の性別欄の運用規定よりも制約が大きい。

加えて通知には、健康保険証の裏面などに戸籍上の氏名を記載することも求めているため、従前から当連合会が指摘してきた、性自認により困難を抱える当事者が、医療機関で戸籍上の氏名を呼ばれるなど、医療機関とのトラブルに発展し、医療機関の受診を控えたりするなどの状況が、改善するとは言い難い。

性的指向・性自認に関して困難を抱える当事者は、さまざまな制度上の障壁により困難を抱えるとともに、医療機関をはじめとする日々の生活のさまざまな場面において、「SOGIハラ(ソジハラスメント)」(性的指向・性自認にもとづく差別的言動等)に接することが多く、性的指向・性自認に関する差別と困難の解消に向けた対応が今後もより一層なされることが期待される。当連合会は、今後も具体的かつ実効性のある法律や各種制度の早期実現を強く要望していくものである。

以上

 

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