LGBT法連合会

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一連の差別発言に対する見解と、関連するQ&A

2015.12.24

お知らせリリース

2015年12月23日
LGBT法連合会
事務局

 

「性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会」(以下、「LGBT法連合会」)は、「性的指向および性自認等による差別等の困難の解消および支援のための法律」(以下、「LGBT差別禁止法」)制定を目指して、結成された団体・企業の連合体です。代表5団体のほか、当事者や支援者、専門家などによる団体、およびこの問題に関心の高い企業など53の賛同団体・企業で構成されています。本日は、幣団体が一連の差別発言に対する見解と、関連するQ&Aをまとめましたので、以下の通りご報告いたします。

 

一連の差別発言に対するLGBT法連合会見解

 

LGBT法連合会
共同代表一同
(URL:http://lgbtetc.jp/)

 

2015年11月末から12月にかけて、全国の地方自治体の議員や職員など、いわゆる公的な職務に従事する者から「同性愛は異常」との差別発言がなされ続けている。LGBT法連合会では、11月30日付で、「市議会議員による『同性愛は異常』発言に関する声明」を発表しているが、その後も差別発言が頻発していることから、事態の深刻さを極めて重く受け止め、改めて発言の不正確性や問題点について指摘すべく見解を取りまとめた。また、別紙において性的指向と性自認に関するQ&Aもまとめた。この見解をもってLGBT法連合会は、広くさまざまな人びとと連携し、差別発言を容認せず、人びとが尊重し合える社会の実現に向け取り組みを進めていく。

 

1.差別発言の問題性と対応の必要性

(1)学術的な不正確性

そもそも、同性愛は異常だという考え方は、学術的根拠を持たないものである。

第一に、生物学的に見れば、同性愛行動をとる動物は、人間に近い類人猿(ボノボやゴリラ等)を含め多く(約1500種)確認されている。

第二に、医学的にも、同性愛は異常ではないことがすでに表明されている。たとえば、世界的に権威を持つアメリカ精神医学会による「精神障害判断基準」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)では、1990年に同性愛 homosexualityの項目が削除されている。また、同年には世界保健機関(WHO)による「国際疾病分類」(International Classification of Diseases and Related Health Problems、ICD)からも同性愛 homosexuality の項目が削除され、「同性愛は治療の対象にはならない」と付記された。なお、日本では1995年1月に日本精神神経医学会がICDを尊重するという見解を出しているため、国内での公式な医学的見解も「同性愛は精神疾患ではない」というものであり、厚生労働省もこの見解を採用している。

第三に、日本を含めた人類の歴史を振り返ってみても、過去、現在を問わず、同性愛が文化的に受け入れられている場合が少なくなく、「不自然なものだ」という言説は成立し得ない。

 

(2)差別発言の影響

①いじめや自死を引き起こす可能性

現状、日本社会における性的指向や性自認を理由とする差別は依然根強く、それに伴う当事者たちの困難は多岐に渡り、極めて深刻である。

『「よりそいホットライン」報告書』によれば、平成25年度の報告書で学校や職場でカミングアウトできない人は約9割にのぼっている。平成26年度の報告書において、カミングアウトできないことにより、性的指向や性自認で困難を抱える人の約6割が職場の人間関係で悩みを抱え、そのことがいじめやハラスメントに発展するケースも報告されている。こうした悩みを職場で抱えている人のうち、約7割に自殺念慮があり、約4割に自殺未遂歴があると指摘されている。

一連の発言は命に関わる困難を有する人びとの状況を顧みないものであり、いじめや自死を引き起こす可能性すらある、看過しがたいものである。

 

②特に子どもに対する影響が大きい

同時に、一連の発言が、特に性的指向や性自認で悩みを抱える子どもに対して強い影響を与えていることも憂慮される。文部科学省の科学研究費によって、今年3月に国内で初めて行われた意識調査「性的マイノリティについての全国調査:意識と政策」の研究結果によれば、子どもがセクシュアルマイノリティである場合に差別意識や拒否感を持つ人は約70%、きょうだいの場合は約66%と、同僚の場合約37%、近所の人35%を大きく上回っている。前述のよりそいホットラインの平成25年度の報告書」において、家族にカミングアウトをしている人が15.5%に過ぎないことと併せて鑑みても、一連の差別発言で傷ついた子どもたちを最も支えるべき親やきょうだいの差別意識や拒否感が強いために、心に傷を負ったまま孤立を深め、著しくメンタルヘルスを害したまま放置される懸念がある。そのため、(1)で触れた危険性は、子どもたちに対してより大きなものとなる。

このような事態を顧みず公的に差別発言を行うことは、困難を抱える子どもたちとその命を軽視することに他ならない。

 

(3)公的な職務に従事する者が対応する必要性

東京高等裁判所は、1997年の「東京都府中青年の家事件」判決において、「行政当局としては、少数者である同性愛者をも視野に入れた、肌理の細かな配慮が必要であり、同性愛者の権利、利益を十分に擁護することが要請されているものというべきであって、無関心であったり知識がないということは公権力の行使に当たる者として許されない」と判示している。この判決からも公職にあるものが差別発言を行うことに対しては、厳正に対処すべきであり、研修の徹底と再発防止策の導入などの対応を要すると言える。

 

2.LGBT法連合会の提案する解決策

LGBT法連合会は、2015年4月5日に発表した「性的指向および性自認を理由としてわたしたちが社会で直面する困難のリスト(通称・困難リスト)」を発表し(第2版を同年9月2日に発表)、同年5月19日には「困難リスト」の法制的な解決策として「性的指向および性自認等により差別の解消、ならびに差別を受けた者の支援のための法律に対する考え方~困難を抱えるLGBTの子どもなどへの一日も早い差別解消を(通称・LGBT差別禁止法私案)」を発表している。

私案では、この間の差別発言をはじめとする、差別的言動や不利益取扱いの未然防止・禁止、ならびに各自治体における支援体制の構築を求めており、国会における超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」へ提出している。日本においても一日も早く性的指向や性自認に基づく差別やそれに伴う困難が解消されるとともに、適切な支援がなされる社会を作るべく、「LGBT差別禁止法」の法制化を強く望む。

同時に、全国の自治体において、法制定に先駆けて率先して、職場研修の徹底、及び地域における性的指向と性自認の差別解消に向け、各規定の整備や家族をはじめとする周囲の関係者や援助職者に対する教育啓発などの、積極的な施策の推進を期待するものである。

 

一日も早く、性的指向や性自認により全ての人が困難を抱えることなく、安全・安心かつ一人一人の個性と能力が尊重される社会を目指して、LGBT法連合会は全力で取り組みを進めていく。

 


 

別紙 参考資料

差別発言に関するQ&A

□同性愛は生物学的に異常であり、病気ではないのですか?

→まず、生物学的な異常ではありません。生物学上、同性愛行動をとる動物は人間以外にも人間に近い類人猿(ボノボやゴリラ等)を含め多く(約1500種)観察されています。生殖に結びつく関係性のみが動物として正しいという考え方は、生物学的には誤りと言えます。

また、病気でもありません。世界的に権威を持つアメリカ精神医学会が発行している『精神障害の診断と統計マニュアル』(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、DSM)では、1973年に同性愛(homosexuality)の項目が削除されています。次いで1990年には、世界保健機関(WHO)も『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』(International Classification of Diseases and Related Health Problems、ICD)から同性愛(homosexuality)の項目を削除しました。その際あわせて、「同性愛は治療の対象にはならない」と付記されています。日本では、94年12月に厚生省がICDを公式な基準として採用することを決め、95年1月に日本精神神経医学会がICDを尊重するという見解を出しました。したがって、日本国内でも同性愛が病気であるという認識は医学上否定されています。

□同性愛は少子化の原因になっているのではないですか?

→少子化の原因にはなっていません。同性愛も異性愛も、本人の意思で変えられるものではなく、また人口に占める同性愛者の割合は時代を通じて安定していると考えられています。少子化の指標である、合計特殊出生率(女性が生涯に産む子ども数)は、日本では1970年代前半の2.1台から、2005年には1.26まで大きく下がりましたが、既に性的指向や性自認の議論が高まりを見せていた2012年以降も1.4台に増えています。また、性的指向や性自認の差別が禁止されている先進国大多数(G7では日本以外全て)は、日本よりも合計特殊出生率が高い国がほとんどです。したがって、合計特殊出生率という観点からみれば、同性愛が少子化の原因でないことは明らかです。

□LGBT法連合会の掲げる、性的指向・性自認とは何ですか?

→性的指向とは、恋愛感情や性的関心が主にどの性別に向いているかを示すものです。自分と同性に向いていれば同性愛、異なる性に向いていれば異性愛ということになります。

性自認とは、「自分は女である」「自分は男である」など、その人が自らをどの性別であると認識しているかを示すものです。上記以外にも、性自認が男でも女でもない場合、両方である場合などもあります。

□性的指向は自分で選択できるのですか?

→異性愛か同性愛かは問わず、性的指向は選択するものではありません。誰に惹かれるかということは、「この人のここがこうだから」と理由付けできるのは惹かれた後からではないでしょうか。自分で決めた選択可能な意志とは遠いところで性的指向は作用します。つまり「気がつかない間に心惹かれていた」というものです。

□性自認は自分で選択できるのですか?

→性自認が自らの生物学的性別と同じである場合と同様、異なる場合もその人が好んでその性自認を選択するというものではありません。

□生まれたときの戸籍性に違和感を覚えるのであれば、体ではなく心を治せばいいのではないですか? また、精神病ではないのですか?

→精神医学において、性別違和そのものは精神疾患ではないとされています。また、医学的にも性自認は治療によって変更可能なものではありません。

□なぜ、生まれたときの戸籍性に違和感を覚えて女性(男性)になりたいのですか?

→女性(男性)になりたい、という表現はあまり適当ではありません。性別違和のある人にとっては現状の身体や性役割に違和感があるのであり、自認の性こそが本来の自分の性なのです。性別変更後、ようやく本来の自分に「戻ることができた」と感じる人もいます。

□性的指向や性自認に基づく困難は人権問題にあたるのですか?

→人権問題にあたると言えます。2011年6月に国連人権理事会では、性的指向や性自認に基づく人権侵害問題に焦点をあてた初めての決議を採択しました。人権の普遍性を再確認し、性的指向や性自認を理由に受けている暴力行為や差別待遇に懸念を示しています。ちなみに日本は国連から状況を是正するよう2008年から再三勧告を受けています。

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